Interview新宿有識者
インタビュー

つながりを生み、新たなまちを創り上げる西新宿のエリアマネジメント<後編>

新宿副都心エリア環境改善委員会 事務局 大成建設株式会社    小林洋平さん、村上拓也さん

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新宿で活躍する様々な人や有識者の皆さんにお話を聞き、新しい新宿をみんなで創る手がかりを探るインタビューのコーナー。

今回は2010年に発足し、西新宿のエリアマネジメント活動を推進してきた「一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会」(以降「環境改善委員会」)の事務局を務めている大成建設株式会社の小林洋平さん、村上拓也さんへのインタビュー後編となります。

後編ではお二人の思い描く西新宿の未来像とスマートシティ構想について熱く語っていただきます。

(インタビュー前編はこちら

※本インタビューは緊急事態宣言前に実施したものとなります。

 

理想の西新宿は「人々が楽しく過ごせる大新宿」

今までの活動を通してお二人が実現したい西新宿はどのようなまちなのでしょうか。未来への展望についても語っていただきました。

 


小林「西新宿の将来像は人が交流して、色々な仕事をしていくということだと思っています。ただ新宿はもっと広く、東口や甲州街道などもあります。西新宿だけにとらわれず、まちのつながりを生かしていく「大新宿」という考え方を持つことが今後重要だと思いますし、実現したら世界的にも類を見ない巨大都市になると思います。」

 

村上「コロナ禍で移動が制限されテレワークをしている期間に、なぜ新宿に行くのかということを考え続けていました。最近考えがまとまり、月並みですが純粋に楽しいまちにしようと思っています。今、自動運転の実証実験なども行っていますが、自動運転の車に乗りたいから来るわけではないですよね。それらの手段に下支えされた楽しさと魅力があるからこそわざわざ家で仕事ができる世の中なのにまちに来るのではないでしょうか。バーチャルも含む「空間」と西新宿にいる「時間」を共有したいとなるのが今の理想です。」


 

絶対的な魅力とまちに行く理由を創り、それらをエリアとして拡大していく。とても大きな話ですが技術の発展などもあり、そう遠い未来ではなさそうです。そのためには交流や新しい出会いのきっかけを生むのが必要とも話しておられました。楽しくて魅力がある場所に人が集まり、そこに来ることで出会いが生まれ発展していく。そんな新宿になればもっと色々なビジネスやイノベーションが起こっていくかもしれませんね。

 

 

 

スマートシティは「目的」ではなく「ツール」

現在新宿で進められているスマートシティ化。環境改善委員会もその活動には大きく関わっています。スマートシティで我々の生活はどう変化するのか、どう便利になるのか。その点についてお話を伺いました。

 


村上「2020年までの我々の活動コンセプトはまちの豊かなオープンスペースをうまく活用する、既存の都市をうまく使いこなして我々のアクティビティを広げていくということでした。ただこの先もこの活動を続けていくにしても、デジタルの力を使うことによってもっとうまく使えるようになると思っています。例えば足元にある広場を例にすると、今会議室は空いてないけど外のベンチは空いているということがわかれば、みんな広場に出て打ち合わせすると思います。このようにデジタルがもっと今の都市を使いこなすためのツールになると期待しています。今までの流れの延長にデジタルを融合させて、より空間の価値を上げるという整理です。」

 

小林「今までは空間を豊かにすれば使ってもらえると思っていたものにサービスを付加する、というのが我々の行っているスマートシティの理解です。ただスマートシティだからテクノロジーを使っているだけで、それは必ずしもデジタルである必要はないと思っています。モビリティにしても自動運転に限らず、手押し車でも新しい自転車サービスでもいいはずです。空間とサービスが一体になって、より利便性を高めていくのが理想的ですね。」


 

スマートシティ化することが目的になるのではなく、スマートシティによってどうやって人々にいい影響をもたらすのか。その視点が重要だということです。またエリアマネジメント活動においてもスマートシティによって変化はもたらされるのでしょうか。

 


村上「スマートシティの話をするときにデータと住民参加の話は切り離せないです。まずデータで客観的視点が得られるとは期待しています。客観的なデータを基に、こういう結果が出ているからこんな施策をしましょうといったように進めることができて、更にそのフィードバックもレビューという形でに可視化されるというような流れですね。そうしたデータ駆動は絶対にエリアマネジメントにも取り入れていかなければなりませんし、確実にその未来が来ると思います。」


 

エリアマネジメントにおいてもデータの導入はプラスになることは多いようです。ただそれだけでは足りないと村上さんは語ります。

 


村上「ただ一方でデータが最適だと言っている取り組みをやろうとなったからといって、その取り組みが世間に受け入れられるかどうかはまた別問題だと思っています。いくらデータに基づいているからといって心情的に納得できるものばかりではありません。なので社会的規範や信頼に基づいた泥臭い活動というのはスマートシティになってもあり続けるのではないかと思います。データ駆動によるエビデンスベースのエリアマネジメントと信頼に基づくエリアマネジメント、この二つの車輪が今後スマートシティになった時により大切になるのではないでしょうか。」


 

スマートシティという言葉だけを聞くと、アナログな手間が省けるような印象を受けるかもしれません。しかしお二人はむしろ逆だと言います。今までよりデジタル含め色々なことが広がっていくため、今まで以上に丁寧にやる必要があるとのこと。会員企業の皆さんと密に連携を取りながら進めていく根幹の考え方が定まっているからこそ、スマートシティ化を進めていけるのですね。

 

 

 

今後のキーワードは「人々の巻き込み」

この後お二人は理想の西新宿実現に向けて具体的にどのような活動を行っていくのでしょうか。根幹となる考え方は変えずに様々なことにチャレンジしていきたいと語ってくれました。

 


村上「今後も会員企業の皆さんと密に連携を取りながら進めていくというスタイルは絶対に変わることはありません。ただそういった中でも、例えばスマートシティとなると得意な企業さんがいます。新しい分野になればなるほど、得意分野で先頭に立ってもらうことが必要だと思っています。なので最初に手を挙げてリードしてくれる企業さんが現れるための工夫をしていきたいです。」


 

また、まちづくりのプレーヤーは企業だけではないとも言います。

 


村上「合わせて一般の人から意見を聞く機会も増やさないといけないと思っています。特定分野の知識では私より詳しい人なんて一般の人の中にはたくさんいるはずです。もっとそういった特別な技能を持った人の声をまちづくりに生かしていくべきです。その反映されたものをしっかりとフィードバックして、実際にまちづくりにこのように反映されましたという結果を見せるというのも大事です。このような一般の人との取り組み体制を作ることも、チャレンジングではありますがやっていきたいと思っています。」

 

小林「色々な人に関わってもらえるエリアにする、ということに重点を置いていきたいです。まちの人達も関わってくる、ワーカーも関わってくる、テナントも関わってくる、オーナーも関わってくる、という風に関わる人たちを増やしていけるのが理想です。」


 

会員企業だけではなく、様々な人々の声を聞いてまちづくりに反映していく。それはまちづくりの理想でもあると思います。インタビュー中何度も出てきた「つながり」というワードを体現したかのような、まさに人と人とのコミュニケーションを大切にし今まで真摯に活動を行ってきた、お二人らしい今後の展望となりました。

 

最後に環境改善委員会としてではなく、新宿を愛する一個人としてのお二人の思いを語っていただき、このインタビューを終了といたします。

 


小林「まちづくりは大義があるのでやるべきだと強く思っています。私はまちづくり推進室に所属していますので、新宿と同時に他の都市も担当しています。そのため個人的な野望としては色々な都市のまちづくりが同じ価値観で繋がっていくととても夢があると思います。新宿と東北がつながっていくといったように、どちらが主ではなく相互に交流し先進的な取り組みを取り入れていくということができれば素晴らしいですね。西新宿以外の場所ともうまくつながりを生むことができたらいいと思っています。」

 

村上「私は個人としてもこのまちを使い倒したいと思っています。空間的なものだけでなく、このまちでやってみたかったすべてのトライアルですね。この環境改善委員会は個社よりもフットワークのいい組織なので、やろうと思ったことが実現しやすいです。だからみんなの思ったことをどんどん実現する場所にしてしまっていいと思います。他の組織や会社の人も何かやりたければ新宿でやっちゃえ、となるのが理想ですね。」


 

協力してくださったお二人、ありがとうございました!

 

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