新宿有識者
インタビュー
目指すのは、新宿と共に発展する面白いサッカークラブ
クリアソン新宿 井筒陸也さん
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新宿を都市と人の観点から研究しているThink!! Shinjukuでは、有識者へのインタビューを通して、様々な角度から新宿を考察していきます。
インタビュー第2回目は、新宿区を本拠地とし、2022年にJFLに参入するクリアソン新宿の広報・マーケティング担当、井筒陸也さんにお話しを伺います。
クリアソン新宿(Criacao Shinjuku)
JFL所属サッカークラブ。
クラブ名の「Criacao(クリアソン)」はポルトガル語で「創造」を意味しており、クラブ理念の「サッカーを通じて、世の中に感動を創造し続ける存在でありたい」に通ずる。
新宿区と包括連携協定を締結している他、多数のパートナー企業と新宿を舞台に様々な取り組みを推進している。
●サッカーをやるなら街や人のために。プレー以外にもサッカーを使う価値があったのがクリアソン新宿。
―本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。早速ですが、井筒さんの経歴をお教えいただけますでしょうか。
僕は大阪出身で、関西で大学時代までサッカーをしていました。大学4年生の時にキャプテンになりチームを日本一に導くことができました。
ちょうどその時に、当時黎明期であったクリアソン新宿の社長と、学生向けのチームビルディングに関するセミナーを通して交流する機会があったんですね。就活もしましたが、Jリーグの徳島ヴォルティスからオファーをもらい、Jリーガーになりました。
ただサッカー界はプロの世界で、個人主義・結果主義っぽいところがあり、それが面白くもあるのですが、“自分のサッカーが誰の何に影響を与えているのか?”ということに興味を持ち始めるようになって。
そして転機となったのがちょうどキャリアも右肩上がりだったJリーガー3年目の時でした。
―素晴らしい経歴ですね。Jリーガーとしてまさにこれからという中で、クリアソン新宿に
入社をされた理由は何だったのでしょうか?
もともと新宿という街が大好きだったんです。ある映画がきっかけで好きになって、学生時代に何度も遊びに来ていました。当時は在来線で8時間かけて東京に出てきて、大久保公園近くの怪しげなカプセルホテルや友達の家に泊りながら1週間くらい滞在して、新宿を練り歩いていましたね。
そして偶然にも、クリアソンが新宿を拠点に活動しているという縁があって。新宿というサッカー不毛の地、そして多様性溢れるめちゃくちゃ面白い街で、Jリーグのクラブができてそれが素敵なクラブだったら、街や人に大きなインパクトを与えられるんじゃないかと、社長に口説かれたんです。ここでなら自分のサッカーを使う価値があるのではないかと決心をして、クリアソンに入る事を決めました。
プレイヤー兼社員として働き、クリアソンの魅力を発信するために広報部を立ち上げました。それが2020年のことで、そのあたりからチームの順位も上がっていき、新宿をはじめ、サッカー界やスポーツ界で認知が拡がっていく中で、“サッカーをやるなら街や人のためにやりたい”という想いを、個人としても、クリアソンとしても発信していっています。
●新宿という街からサッカーを変える。変化する新宿で新たな挑戦を仕掛けていく。
―クリアソン新宿なら街に貢献できそうだとお感じになられたのですね。発信することを意識されているのは、どんな背景があるのでしょうか?
サッカー界は関東の大学が強くて、そこに対して「関西の俺らにしかできないハングリーな戦い方を見せてやろうぜ!」っていう想いで大学時代はサッカーをしていました。我々は今どこに位置付けられているのか、どこにカウンターパンチを打とうとしているのか、を常に考えていて。
クリアソン新宿のやろうとしている事も一緒で「新宿という街からサッカー界をもっと面白くしようぜ!」ということを本当にど真面目に考えているクラブで、その挑戦をきちんと表現で伝えたいと思ったんです。
今は仲間と共にちょっとずつクリアソンが目指す姿を具現化しているところです。
新宿は2040年のグランドターミナル構想に向けて大きく変化をしていきますし、そこには欲張りな人達が集まってきて、何か生まれそうな期待感があります。
―新宿で何か仕掛けてやろうとする姿勢、とてもワクワクします!新宿を拠点にしている難しさはありますか?
物理的にはサッカーをするスペースが少ないことです。練習場所は高田馬場駅に近い落合のグラウンドを貸してもらっています。
あとは、徳島ヴォルティスの時は地元の一体感があって応援をしてくれている方が多かったのですが、新宿は新宿や東京出身でない方が集まっていて、僕らが新宿を代表するサッカークラブを掲げたところでどれだけの人が共感してくれるのか、僕らは誰の代弁者となり得るのか、というところに難しさを感じますね。まあそれが面白いところなんですけど(笑)
―東京は東京以外の出身者もかなり多く、愛着が形成されにくい場所かもしれませんね。
クリアソン新宿のファン層はどのような方なのでしょう?また、これからどのようにファンを増やしていこうとしていますか?
ついこの間までは「社会人サッカー」だったので、ファンは家族とか取引先の方々だったのですが、JFLに昇格して一気にBtoCのマーケティングが必要になった感じがあって、ファンの獲得には苦労しているところです。
これからは、新宿の地域の方、さらには新宿からサッカークラブを作ろうとする心意気に賛同して一緒に挑戦してみたいという志をもった方達を増やしていきたいです。そのような方達との取り組みを始めようと考えているところです。
●新宿はまるでテーマパーク。この面白い街の魅力を、新宿代表として発信していきたい。
―井筒さんが感じる新宿の一番の魅力は何でしょうか?
新宿には色んな顔があるところですね。新宿中央公園は広々としていて綺麗。なのにガード下をくぐって東口に出ると新宿らしい雑多な感じの街になり、神楽坂まで行けばオシャレな空間になる。
例えば港区だったら全体として一括りのイメージがあって、逆に下北沢や三軒茶屋はエリアとして文化的な雰囲気はあるけど世田谷区の下北沢という捉え方はあまりしない。
新宿はエリア毎に色合いは違うのに、新宿の○○という認識がある。まるでテーマパークみたいでお得感がありますし、そんな風に楽しめる街って他には無いんじゃないかと思います。
―新宿は誰の価値観も否定しない、懐の深さみたいなものを感じますよね。逆に、新宿の課題だと思う点はありますか?
僕自身は新宿が好きで、新宿に住んでいるのもあって、色んな側面を楽しんでいるのですが、
たぶん新宿外から来る人は、歌舞伎町にしか行かない人は歌舞伎町だけ、神楽坂だけ、といった限定的な来訪をしている気がするんです。新宿はもっとぐちゃぐちゃで面白い街だと思うので、クリアソン新宿が包括的に伝えられる役割ができたらいいなと思います。
誰の許可も取らずに名前に地名を入れてシンボリックな存在として活動できるのって、サッカークラブくらいじゃないですか(笑)
●サッカーゲームは手段。目的は、交流を通して、人々に喜びを、街に賑わいを創造していくこと。
―新宿高校サッカー部のユニフォームデザインや、クラーク高校にトレーニングコーチ派遣など、学校との取組もされていますが、学生さんとはどのようなコミュニケーションをとられているのでしょうか?
学生の時って自分の通っている街を意識することって少ないじゃないですか。なので、新宿にはどんな人が住んでいるとか、僕らが考える新宿の社会課題や解決についてお話をさせてもらっています。
新宿に通う学生達が、そのような視点をもって新宿を眺めてくれたら嬉しいなぁと思います。
―東京モード学園と産学連携プロジェクトも実施されていますよね?
新宿で何かに挑戦したいと思っている人達に、例えば披露する場の提供であったり、僕らが価値提供できればと思っています。
特にコロナ禍の学生さんは屋外でアウトプットする機会が本当になかったので、僕らの試合の時にオリジナルグッズ制作ワークショップを開催してもらったんですよ。それが学生にとって初めて屋外でやったイベントで、クラス全員が一丸となって取り組んでくれました。終了後には記念撮影もしてすごく楽しそうにしてくれていたのが印象的でしたね。
―クリアソン新宿の試合会場が、東京モード学園の学生の表現する機会になった。まさにお互いが価値を共創したかたちになったんですね。
サッカーって間口を閉じようと思えばいくらでも閉じられるので、サッカーファンだけで盛り上がることもできるんですけど、僕らはもうちょっと広いものであればいいなと考えています。皆さんにサッカーというコンテンツをうまく使ってもらうということを大事にしています。
サッカーはその競技性が面白いことが大事なのはそうなんですけど、それだけじゃないというか。競技性が重要なのではなく、その先に誰が夢中になっているのか、そこで何が起こるのか、というところに想像力を膨らませていきたい。サッカーのゲームは手段であって、目的はサッカーを通じて街が良くなったり、へこんでいる人が元気になったり、新たな人との交流が生まれたり、そういうことまで欲張ってもいいんじゃないかと思っています。
―サッカークラブとして誰とでも手を組んでいく姿勢や、フットワーク軽くやっていくスタンスがクリアソン新宿らしいですね。
これからJリーグに上がって、サッカーの強さやクラブの規模が必要になってきた時でも、その信念は変えたくないという想いは強いのでしょうか?
もちろん、我々はJリーグを目指している中にいるので、サッカーの強さは重要で、そこにリソースを割かないといけない部分はあります。ただそこに集中しすぎるとどんどんオリジナリティが減っていくので、サッカークラブとしての基準は満たしながらも、自分達を失わないバランスを持っておきたいです。今ちょうどその過渡期の時期ですね。
●夢は、誰もが楽しめるサッカークラブを作ること。西口ワーカーをビルから連れ出したい!
―今後、新宿を舞台にやってみたいことはありますか?
僕個人としては、アンダーグラウンドな感じが好きなので、新宿のアングラな世界の人ともっと交流を重ねたいですね。今はネットでなんでも知り得る時代で、その情報には勝ち目がない。しかしディープなところは行ける人しか行けないので、そこでの経験や情報が価値になると思うし、そこでの人脈を活かして何かに繋げていけたら面白いなとぼんやり考えています。
クリアソン新宿の社員としては、やっぱり本当に面白いサッカークラブを作りたいです。
サッカーってファンだけにあるものでなくて、もっと魅力的なものだと思っていて。
ルールを知らないおじいちゃんやおばあちゃん、日本語を知らない外国籍の方、初めてサッカーを見る人、色んな人がきっと楽しめるコンテンツだと思うので、その魅力がちゃんと伝わると、僕のやってきた人生が肯定されるというか。勝手にそう自分の中で整理して頑張っています。
―Think!!Shinjukuは新宿西口にフォーカスしているのですが、新宿西口の魅力を改めて教えてください。
西口は新宿なのにすごく静かで広々していて良いですよね。新宿中央公園は高層ビルに囲まれていて、そのアンバランスな感じもすごくかっこいい。
一方で、一つのビルの中で完結するようにできているのが勿体ない感じがします。イレギュラーな出会いが生まれにくいですよね。駅直結で高機能な半面、機能的すぎる感じです。かといってごちゃごちゃするのも嫌なので…バランスが難しいですね(笑)
―我々のオフィスビルも地下通路に通じていて偶発的な出会いは少ないですし、愛着みたいなものが湧きにくい感覚がありますね。このような課題に対して、解決策として何かお考えになっていることはありますか?
西口のオフィスワーカーの人達と何か一緒にできないかな、と考えています。ビルから連れ出して、新宿中央公園でフットサルするとか試合見に見てもらうとか、そういう交流が生まれるかもしれない場を作れたらいいなと思います。
―ぜひご一緒できたら嬉しいです!本日は貴重なお話をありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。共に新宿で挑戦していきましょう!
●多様性の街・新宿をフィールドに、面白がって挑戦し続ける姿勢がクリアソン新宿の持ち味。
サッカーの先にある世界の創造に目が離せない。
サッカーとは馴染みの薄い新宿だからこそサッカーというコンテンツを使って活動できることがまだまだたくさんあると、一見不利な状況に見えることも前向きに捉える井筒さん。
サッカークラブとして、強さだけではなく、こんなにも街を想いながら活動しているクラブは他にないのでは、と思いました。
新宿には、まだ見ぬ可能性を信じて頑張る人を熱くさせる何かがあるように感じます。
様々な人が集まる新宿は良い意味で多様性と表現されますが、人々の繋がりが希薄な街でもあります。
顔が見えない街・色のない街、と言われることのある新宿を、クリアソン新宿が人々のハブとなり、賑わいを作り、街に一体感と彩りを添えてくれると期待しています!
今後のクリアソン新宿とThink!!Shinjukuの取り組みにぜひご注目ください!
クリアソン新宿 オフィシャルサイトはこちら
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