新宿有識者
インタビュー
【新宿の「つづき」は、もっとおもしろい。】自動運転がつなぐ、未来の西新宿
一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会 小林さん、杏村さん
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当社は「人と街をつなぎ、未来の新宿を創る」というコンセプトのもと、2025年10月より人と街をつなぎ、新宿の魅力や各種情報を発信する仮囲いプロジェクト、「新宿の『つづき』は、もっとおもしろい 。」を開始します。
新宿駅へお越しの方々に、新宿への期待感をお持ちいただけるような新宿の魅力・情報・未来に向けた取り組みを、新宿の企業・団体と連携しながら、お届けすることを目指しています。
この取り組みの第一弾として、一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会様による、自動運転モビリティのサービス実現に向けた取り組みについてインタビューを実施しました。その内容を、本ページでご紹介します。
※仮囲いは2025年12月下旬頃まで、小田急線新宿駅西口地下改札口付近にて掲出しています。ご覧いただく際は、周囲の通行者へのご配慮をお願いいたします。
■一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会
西新宿地区全体での取り組みによる課題解決や都市間競争力の向上を目指し、民間企業十数社で2010年6月に任意団体として発足。2014年4月には、法人格(一般社団法人)を取得し、官民オープンスペースの一体的な活用に向けた取り組みなど、積極的な活動を進めています。
「西新宿エリアの魅力を高める新たなモビリティの実現」に込めた想い
一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会 小林さん×杏村さん

写真左:杏村さん 写真右:小林さん
西新宿の街をより住みやすく、より価値のあるものにするために、一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会(以下、環境改善委員会)は、様々な取り組みを行っています。今回は、その中の「自動運転」の実証プロジェクトについて、本取り組みを統括する技術担当理事の小林さんと企画・運営担当の杏村さんに、プロジェクトの目的や、技術面で課題だったことを伺いました。2019年から始まったこの取り組みは、単なる技術実験にとどまらず、地域とのつながりや未来の都市像を描く挑戦でもありました。
「迷う街」から「回遊できる街」へ
西新宿は、新宿駅から新宿中央公園までの副都心エリアに位置し、オフィスビルが立ち並ぶ都市空間です。1971年に開業した京王プラザホテルをはじめ、築50年を超える建物も多く、都市としての成熟とともに、課題も浮き彫りになってきました。実際に現地で活動する中で、道に迷う人々の姿を目の当たりにし、技術の必要性を実感したといいます。
小林:2010年に発足した環境改善委員会は、街の魅力向上を目指し、官民連携で活動を続けてきました。その中で感じたのは、“この街は、訪れる人が多い一方で、構造的に迷いやすい。立体交差や広すぎる空間が、移動の障壁になっている”ということでした。自動運転は、そうした課題を解決する手段として検討が始まりました。
杏村:街の回遊性を高め、誰もが安心して移動できる環境をつくることが今の私たちの目標です。

自動運転は“手段”であり“体験”でもある
2020年度から始まった実証実験では、毎年技術的課題を設定し、改善を重ねています。信号の視認性やトンネル走行など、都心ならではの難しさに挑みながら、車両の性能も向上。2024年度には乗降ポイントを7カ所に増やしています。西新宿は鉄道、バス、タクシーが豊富にあり、地方のように「交通弱者の移動手段確保」が自動運転の唯一の目的ではありません。そのため、限られた予算の中で様々な工夫を行い、自動運転を単なる代替交通手段ではなく、「街の魅力や利便性を高める移動サービス」として位置づけています。
杏村:自動運転は、ただの移動手段ではなく、街の体験価値を高めるツールです。乗ることで街の魅力に気づき、楽しさを持ち帰ってもらえるような存在になればと考えています。
小林:西新宿は鉄道、バス、タクシーなどの公共交通が充実しており、中山間地域のように「交通弱者の移動手段を確保すること」だけが目的ではありません。そのため、自動運転は単なる代替手段ではなく、「街の魅力や利便性を高める移動サービス」として位置づけられる必要があります
地域とのつながりが生む“愛着”
2023年度からは、西新宿小学校とのコラボレーションもスタートしています。児童が描いた絵を車両にラッピングし、翌年には実際に乗車体験も実施しました。
杏村:子どもたちが純粋に楽しんでくれる姿が印象的でした。地域の方々にも知ってもらうきっかけになったと思います。実際に乗車した人々からは、「怖いというより楽しかった」「前より性能上がりましたね」といった声が寄せられました。リピーターも増え、技術への関心や街への愛着が育まれていることを感じます。
小林:街の人々が技術の進化を実感し、愛着を持ってくれることがこのプロジェクトの大きな成果だと考えています。
自動運転が描く未来の都市像
自動運転が目的地と目的地を結ぶ「移動手段」としてだけでなく、年齢や立場に関係なく誰もが気軽に何かの体験を楽しむための手段として用いられるようなアイデアも、将来の姿としてあがるようです。

小林:都市空間にとって「多様な人々を受け入れる寛容性」はとても重要だと思います。昔はオフィスビルで自分の席だけに向かい、用事が終われば帰る、というように寛容さの少ない環境が多かった。でもこれからの街は違います。障がいの有無や言語の違いなどに関わらず、いろいろな人が来て、自分の思うように時間を楽しんで帰っていただけるような場所であることが大切です。
新宿は小田急線や京王線、JRなど沿線から多くの人が集まるターミナルですから、そうした「寛容な街」の姿が一層求められます。その実現に、自動運転モビリティが大きく貢献できると考えています。
杏村:そうですね。これまでは乗車の予約ができるか、問題なく走れるかなどに重点的に取り組んできました。 これからは「移動している間」に何ができるのか、誰に乗ってもらうのかを、もっと検討していくフェーズだと考えています。 西新宿エリアはオフィスやホテルを利用される方も多いので、移動中に「移動だけではない付加価値」を感じていただけるような体験を提供していきたいです。
小林:すでに新宿には施設も人もスペースもたくさんあります。それらを目指し、多くの人が明確な目的を持って訪れる街になっていますよね。これからは、それらの目的地をどのように上手くつないで、居心地よく時間を過ごせる場所にできるかが大事になって来ると思います。
杏村:僕自身も、ただ仕事で来るだけではなく、気分よく帰れるような街になってほしいと思っています。
新宿は「働くだけの場所」などと、単一の目的のためだけで、他に立ち寄らずに通過してしまいがちです。でも、ここで新しい気づきやアクティビティが生まれれば、訪れた人が何かを持ち帰ることができる。自動運転は、そうした体験をサポートする存在になれるのではないでしょうか。
「寄り合いまちづくり」が生む可能性
環境改善委員会は、このエリアにある様々な企業が参加する“寄り合い型”のまちづくりというコンセプトに基づいて活動されています。自動運転プロジェクトもその一つです。

杏村:自動運転の検討が始まったのは2019年頃からです。環境改善委員会の中から、西新宿という街のアクセスの課題を、新しい技術で解決しようということで自動運転の取り組みが検討され、実証が始まりました。
小林:社会的にもスマートシティやデジタル技術活用が話題になり始めていた時期でした。委員会の会議で、ある損害保険会社の役員が「自動運転に取り組みたい」と手を挙げてくださいました。正直、損害保険会社からの発案に驚いたのですが、よく考えれば当然で、自動運転社会では保険やリスクマネジメントのあり方が根本的に変わる。だからこそ自動運転は会社の将来に直結するテーマだと説明されて、すごく納得しました。その瞬間に「これは本当に進められる」と感じましたね。
そんな環境改善委員会の活動を通じて、企業同士が互いを称え合い、地域の節目を共有するような文化も根付いてきているとのこと。創業100周年を迎えた企業を周辺他企業によって一緒にお祝いする取り組みや、町内掲示板のような情報発信スペースの提供も、このエリアと企業、そしてそこに暮らす人々を結び付け、一体感を高めるための仕掛けです。今後も、より多くの参加企業を巻き込みながら、持続可能な仕組みづくりに挑戦していく、と言います。
新宿における自動運転の「つづき」とは?
西新宿では、自動運転という新たなモビリティの取り組みが愛着や共感を育み、都市間の交流や新しい魅力を創り出そうとしています。自動運転は、街の中で人や企業、地域の想いをつなぐ“きっかけ”であり、移動を楽しむ体験へと変えていくことでしょう。
小林:この街には魅力的なものやスペースがたくさんあり、多くの人も訪れています。それらをつなぎ、居心地の良い時間を提供することが、未来の新宿の“つづき”になると思います。
杏村:ただ仕事や学校のために来るだけでなく、せっかく来たからには「プラス一つ」を持って帰れるような街になればいいなと思います。そうした豊かさを提供する点で、自動運転という新たな技術が寄与できる可能性は大きいと考えています。

西新宿の街づくりは、技術と人の想いが交差する場所。自動運転という“きっかけ”が、未来の都市をどう変えていくのか。その可能性は、まだまだ広がり続けています。
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